役に立つ分析と役に立たない分析
Eコマースサイトなどの購買データを分析すると、売れ筋商品、商品の販売数量・金額などの基本的な情報以外に、初回購入ユーザー数、2回目以降の購入ユーザー数、優良顧客/リピーター/初回購入ユーザー/離反ユーザーの割合、初回から2回目購入までの期間、ユーザーの平均購入単価、LTVなど、さまざまなデータを計測して分析することができます。
それらのデータを見ることで自社の顧客の傾向が今後打つべき対策を立てることができるのですが、役に立つデータ分析と役に立たない分析があります。
それは、個別の○○分析が役に立って、▲▲分析が役に立たないというものではなく、分析をして課題を考えて改善策を考えるものが役に立つ分析で、「なるほど!」と新しい発見だけするものは役に立たない分析です。つまりは、データ分析を活用する人次第です。
データを見るだけではなく、そこに課題を発見して、その課題がどのように解決・改善できるかを常に考えましょう。
【ポイント】まずデータ計測ができる準備を!
データ分析が重要なのは言うまでもありませんが、実はそれ以上に重要なのは、必要なデータが計測できているかどうかです。例えば、年代ごとの購買分析をしたいと思っても、商品購入時や会員登録時に購入者の生年月日を聞いていなければ、年代ごとの商品購買傾向は分析することができません。また、職業別に購買傾向が分かれる商品の場合には、職業のデータを取得する必要があります。
まず、どんな分析を行って、どういうことが知りたいのかを明確にして、それを分析するために必要なデータを洗い出し、購入時や会員登録時などにデータ取得できるようにするこが重要となります。
CRMで活用する様々な分析
CRMを実施するうえで、自社の顧客を知ることが最初にやるべきことです。その際、さまざまな分析方法があるので、ここで紹介していきましょう。
RFM分析
RFM分析とは、直近の購入時期を意味するRecency、購入頻度を表すFrequency、そして購入金額を表すMonetaryの頭文字を取って名づけられた分析方法です。RFMの3つの指標に基づいて、顧客を「優良顧客」から「離反客」までグループ分けを行い、その傾向を把握する分析です。グループごとに施策を展開することができます。
デシル分析
デシル(Decile)はラテン語で「10分の1」を意味し、顧客を購入金額が高い順に10個のグループに分けて、優良顧客を明らかにする分析方法です。ハガキなどのDMは、印刷費と郵送費がかかるため、全ユーザーに発送するとコストが膨大になるため、効果的なユーザーのみを選定(年間購入金額が高い上位30%など)してDMを送る際などに役立ちます。
CTB分析
CTB分析は、分類を表すカテゴリー(Category)、デザインやサイズを表すテイスト(Taste)、そしてブランド(Brand)の3つの指標に基づいて顧客を分類する方法で、顧客の志向を把握して購買予測を立てるときに活用します。
CPM分析
カスタマー・ポートフォリオ・マネージメント(Customer Portfolio Management)の頭文字から名づけられた分析方法で、顧客をポートフォリオに合わせて10パターンに分類し、それぞれのグループに適した施策を行って中長期的に顧客育成を図る時によく用いられます。
F2転換率
転換率とは、アクセスしたユーザーのなかで注文に至ったユーザーの率のこと。10人アクセスして2人が購入したら転換率は20%となります。F2の“F”はfrequency(フリークエンシー)の略で頻度という意味になります。F2は初回購入を行った新規顧客のうち、2回目の購入を行った顧客のことで、その割合をF2転換率と言い、リピーターがどれくらいいるかを把握する指標となります。F2ユーザーを増やすことで全体のリピート数を増やすことが可能です。
購入サイクル分析
顧客が、次回購入するまでの平均的な期間を分析する方法です。割り出した購入サイクルで、適切な情報発信頻度を決める際の参考データとなります。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析とは、年齢や性別などの顧客属性や趣味嗜好、購買履歴を調べて類似する特徴を持つ顧客ごとにグルーピングして分析する方法で、既存顧客の特性を把握できる手法です。
行動トレンド分析
属性ごとに顧客を分類し、シーズンごとの購買データを割り出して販促に活用する方法です。時期に合わせた売れ行きが分かるため、顧客へのプロモーションや次の販売戦略立案に使用されます。
クラスター分析
クラスター分析は、さまざまな異なる性質を持つものが混ざり合った集団から、似た性質のものだけを集めてクラスター(同じような傾向を持つ集団)を作って分析する手法です。
このようにCRMを実施する際には自社顧客の様々な側面から知ることが重要となるため、多くの分析方法があります。
ただ、すべての分析をする必要はなく、知りたい情報や今ある課題を解決するためなど、その時々で必要な分析をするケースが一般的です。
本記事では、CRMをこれから実施しようとする方に対して、実践で役立つ3つの分析とその後の課題解決手法などを解説していきます。
実践で役立つ分析①:F2転換率
F2転換率とは
F2転換率は、前述のとおり、F2転換率は、初めて購入した方の中で、リピーターとして2回目を購入した方の率のことを指します。F3、F4…はそれぞれ3回目購入者、4回目購入者…となります。

転換率は、上記の表のように、特定期間内(例えば1年間)で1回目購入ユーザー、2回目購入ユーザー、3回目購入ユーザー…のように、それぞれの購入ユーザー数と割合を出すことで算出できます。赤枠部分が2回目購入ユーザーとなり、20.1%がF2転換率となります。
2回目購入ユーザーだけでなく、3回目購入ユーザー以降のユーザーの転換率も参考にすることができます。
F2転換率をアップすることが重要な理由
F2転換率を上げることで、2回目購入者数が多くなり、それと連動してF3以下の購入者数も増やすことが可能です。

まず、上記左の表の現在20.1%のF2転換率を右の表のように30.0%まで引き上げたとします。その場合、左の表で初回購入者(F1)25,886人のうち20.1%にあたる5,208人が2回目を購入していましたが、F2転換率が30.0%になると、右の表のように7766人が2回目を購入することになります。
F3転換率以降の転換率が変わらない前提であれば、F3以降のユーザー数はF2転換率が20.1%の時よりも多くなります。
仮に顧客の平均購買単価が10,000円だった場合、F2転換率が30.0%になると、20.1%だった時よりも年間の売上は、49,692,435円もアップすることになります。
このようにF2転換率を伸ばすことで、既存顧客からの売上だけで大きく売上を伸ばすことが可能となります。
F2転換率をアップする方法
F2転換率をアップするにはメールでのステップメール、LINEやアプリでのステップ配信が効果的です。
【ポイント】ステップメール/ステップ配信
ステップメール/ステップ配信は、あらかじめ準備したシナリオに沿って複数のメールやメッセージを登録して、指定した時期やタイミングで配信する手法です。例えば、30日分のダイエット用サプリメントを初回購入ユーザーに対して、3日後、7日後、14日後、21日後、28日後…など、事前に決めておいたタイミングでメールやメッセージを送信します。購入直後は使用方法やブランドなどについて紹介して、使い切る前に次の購入を促すメールやメッセージを送信することで、2回目以降の購入を促進していきます。
ステップメール/ステップ配信で重要なのは、ユーザーがどのように態度変容するかを考えたストーリーに沿って配信のシナリオを設定することです。下記はダイエット用サプリメント(1ヶ月分)を購入して離脱(2回目を買わない、もしくは途中で服用を辞める)しようとするユーザーの心理状態を仮説立てて、それを払拭するためのステップメール/ステップ配信の内容を構成したものです。

離脱するユーザーのインサイト(仮説)
- 購入直後:期待感を持ってサプリメントの服用を開始
- 購入から2週間程度まで:モチベーションを維持して服用を継続
- 2~3週間目:効果がでないため半信半疑に
- 3~4週間目:効果に疑問を抱いて服用をストップ
上記の仮説から、3~4週間経ってから2回目の購入を促しても、すでに効果に疑問をもったり、あきらめたりしている状態では、まず次回購入はないでしょう。
離脱を防ぐためには、効果に半信半疑になる前に、効果的な使い方や長期間使用を続けることが大切であることを伝える必要があります。そのためには、効果的な服用方法や実際の服用している方々の声などを配信して離脱を防ぐシナリオを考えていきます。
仮説に基づいた離脱を防ぐためのシナリオ例
- 初めて購入した方に効果的な服用方法を説明
- サプリメントの成分や成分の効能などを紹介
- 長期間服用した方々の声などで長期の服用をおすすめ
- 初回購入者限定のメリット(オファー)を訴求して2回目購入を促進
このように、離脱ユーザーを防ぐ施策を行うことで、F2転換率をアップさせることが可能になります。
実践で役立つ分析②:RF分布
RF分布とは
RはRecency(最終購買日)、FはFrequency(購買頻度)の略。「最終購入日からどれくらい経過しているか」「購入頻度はどれくらいか」をそれぞれランク分けして掛け合わせ、“優良顧客”、“リピーター”、“新規顧客”、“離反予備群”、“優良顧客からの離反顧客”、“離反顧客”に分類して、それぞれの顧客がどれくらいいるのかを把握するものです。
RFのランク分け
下記は、最終購入日からの経過日数が、30日以内の顧客を「5」、31-60日以内を「4」、61-90日以内を「3」、91-180日以内を「2」、181日以上を「1」にランク分けしています。
また、購入頻度が、10回以上の顧客を「5」、5-9回までを「4」、3-4回までを「3」、2回を「2」、1回のみを「1」とランク分けしました。

顧客をランク分けしてマッピング(RF分布)
上記のランクに顧客を分けてマッピングしたものが下記の図(RF分布)となります。

RF分布では、それぞれの顧客がどれくらいの割合でいるかを把握できます。(枠の大きさと割合は関係ありません)
上記のRF分布の場合
- 優良顧客:5.6%
- リピーター: 10.7%
- 新規ユーザー: 13.0%
- 離反予備群:5.3%
- 優良顧客からの離反:1.9%
- 離反顧客: 55.3%
この時点でこのパーセンテージが良いか悪いかを判断するのではなく、継続的にRF分布を観測して、施策が有効だったかどうかを判断します。
RF分布に基づく改善施策
RF分布では、以下のような施策を目指します。
- 新規顧客をリピーターに
- リピーターを優良顧客に
- 離反顧客をリピーターに
- 離反予備軍を優良顧客に
- 優良顧客からの離反を優良顧客に

そのためには以下の各施策を実施するとともに、施策前後のRF分布を比較して、各施策の効果の有無を把握します。効果がなかった施策については、詳細を分析して改善を行うPDCAを回していきます。
| 対象ユーザー | 目的 | 施策 | 具体的展開 | |
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① |
新規ユーザー | 2回目購入を促進してリピーターへ | ステップメール | 2回目購入した際の特別オファーを提供。 |
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② |
リピーター | 複数回購入を促進して優良顧客へ | ステップメール | 複数回購入するメリットを促進。 |
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③ |
離反予備群 | 完全に離反する前にリピーターへ | キャンペーンメール | 限定の特別キャンペーン実施。 |
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④ |
離反顧客 | 再購入への掘り起こし | 休眠掘り起こしメール | メリットを感じる最大限のオファーの提示。 |
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⑤ |
優良顧客からの離反ユーザー | 離反理由の把握/優良顧客の維持 | アンケート調査 | 優良顧客ではなくなった理由を把握して優良顧客維持の施策を展開。 |
RF分布は、自社の顧客状況をもとに、改善を図るために施策の実施と定期的定期的な計測に活用します。
実践で役立つ分析③:購入サイクル分布
購入サイクル分析とは
購入サイクル分析とは、2回以上購入した顧客が、どれくらいの期間で次の商品を購入しているかを分析するものです。以下は、はある商品の購入サイクルです。
31-40日で購入した顧客が一番多く、50日以内で半数以上の56.00%の顧客が購入しています。
また、購買意欲が高まるのは、購入後21日から60日ということがわかります。
反対に121日以降はほとんど購入されなくなっています。

購入サイクル分析に基づく改善施策
購入サイクル分析は、顧客に配信するステップメール/ステップ配信の配信タイミングやメッセージ内容を決める際に活用できます。
前述のグラフからわかること
- 21日から購買数が増加
- 61日以降で購買が減少
- 121日以降はほとんどなし
この事実をベースにコンテンツ配信タイミングを決めるデータとして活用します。
改善施策案
- 購入後20日ぐらいまではブランド認知や不安払しょくのためのメッセージを配信
- 20日以降は次回購入促進のための販売促進や購入メリットを配信
- 100日目程度で情報発信を終了

まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はCRMに関して実践で役立つ3つの分析方法を解説しました。CRMでは様々な分析がありますが、すべて実施する必要はありません。改善したいところを把握して、その改善のための分析を実施することが重要となります。ただ、もし、改善したいところなどがわからない方は、ぜひ、今回の3つの分析をチャレンジしてみてください。
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日本通販CRM協会(https://japan-crm.org/)
