CRMの時代はもう終わった?
CRMを長くコンサルティングしていて、セミナーなどにも登壇していた経験から、いくつか気付いたことがあります。
まず、セミナーを開催すると、他のWebマーケティング施策と比べるとCRMセミナーは結構な割合で応募が少ない…。CRM、インターネット広告、Webサイトリニューアル、ユーザビリティ改善、SEOなど、さまざまなセミナーを年間40~50本、数年にわたって実施しましたが、一番集客に苦労するのがCRMセミナーでした。もうCRMの需要はないのかと一時期考えたこともありましたが、アンケートや直接お客様に話を聞くうちになんとなく理由が見えてきました。
一般的に、既存顧客のフォローより新規顧客獲得の方が重視される傾向が強いため、WebプロモーションやSEOの方が優先順位が高いと考えている方が相当数いること、それに加えて「CRM=メルマガ配信」と考えている方が意外に多く、メルマガは今では開封率が少ないことからキャンペーンの際の送信ぐらいしか活用していないこと、が主な理由だということがわかったのです。
既存顧客のフォローよりも新規顧客獲得の方が重要か?
結論から言うと両方重要です。もちろん、新規顧客を開拓することで売上やシェアを伸ばすことができるため、新規顧客獲得は最も重要な施策です。既存顧客は、いずれは離れてしまうため、既存顧客へのアプローチだけだと事業としての成長が望めません。ただ、私から言わせると、新規顧客獲得と同じぐらいの位置づけで既存顧客へのフォローによるリピーター確保も重要だと考えています。
理由は、新規で顧客を獲得するよりも、既存顧客から売上を上げることの方がはるかに低コストで実現できるからです。
また、最近では、SNSでの情報流通が多く、リピーターやロイヤルカスタマーが多いとSNS上で良い評判が自然と拡散される可能性も少なくありません。
こうしたことから新規顧客獲得と同じぐらいの位置づけで既存顧客への対策も実施すべきだと考えます。
CRMはメルマガ配信か?
メルマガはCRMのひとつの手段ではありますが、メルマガを配信することがCRMではありません。
CRMは、日本語に直訳すると“顧客との関係を管理”する方法のことで、顧客属性や購買履歴などを把握したのち、さまざまな角度から顧客をセグメント(グルーピング)して、顧客セグメントごとに適正な情報を発信してPDCAを繰り返しながら、リピーターやロイヤルカスタマーへとナーチャリングしていくものです。
顧客とのコミュニケーション手段も、郵便物(DMなど)、メール、最近ではLINEやSMSなど、1 to 1コミュニケーションが可能なものであれば活用することができ、場合によっては電話によるアプローチなどを行う場合もあります。
また、メールだけを考えた場合でも、キャンペーン時などに単発で配信するメルマガ以外に、購入後に自動で配信するThanksメール、誕生日など特定の日に自動で送るメール、あらかじめ商品購入日や商品到着後から、3日後、7日後、14日後…など、事前にメルマガを登録して自動配信するステップメールなど、さまざまな方法があります。
ここでは、こうしたよくある勘違いや間違った運用をふせぐために、あらためてCRMに関して解説していきます。
CRMとは
あらためてCRMを解説します。
CRMは、Customer Relationship Managementの略で、顧客との良好な関係を築いて、リピート顧客になってもらい、さらにはロイヤルカスタマーになってもらうための顧客とのコミュニケーション戦略のことです。
商品やサービスを販売するマーケティング戦略にはいくつかの段階があります。

- 一般ユーザーの潜在層を顕在化させる戦略“デマンドジェネレーション”
- 顕在化したユーザー情報などを獲得する戦略“リードジェネレーション”
- 顕在層への購買意欲を醸成させる戦略“リードナーチャリング”
- 購買した顧客にリピーター/ロイヤルカスタマーになってもらう戦略“CRM”
今回説明するCRMは4つ目の位置づけになります。
本記事では、CRMの進め方について解説します。
CRMの効果的な進め方
CRMを実施するのは主に4つのステップあります。

まず、現在の顧客属性や購買履歴などを把握します。複数商品を販売している場合は、商品ごとに顧客属性やペルソナが違うケースも多く、この調査/分析は、CRMを実施する基盤となるものです。
顧客を把握した後は、どういった顧客が購入しているのかを具現化するペルソナを設定し、それに合わせて、分析に基づく顧客セグメントやその顧客セグメントに対する情報発信戦略やKPIを策定します。
それができたら、具体的に配信するコンテンツをつくり、情報発信スタートです。
情報発信が開始された後は、その情報による効果を測定して、効果が悪ければ改善を行ったり、別のセグメントへの配信を行ったり、PDCAをまわしていきます。
こうした一連のステップを踏んでいくことで、効果的なCRMを実施することができます。
以降、ステップごとにもう少し詳しく解説していきます。
■調査/分析
データをもとに分析を行いますが、おすすめは、定量データと定性データの両方を分析することです。
定量データ分析
定量データは、ECサイト運営している場合は、ECサイトの購買データを使用します。リアル店舗を展開している場合には店舗のPOSデータになるでしょう。
取得しているデータ項目にもよりますが、売上、販売数量、男女比、年齢層、エリア、転換率、購買頻度、LTV、RF分布など、商品ごとやユーザー属性ごとに分けて分析をします。
ここで重要なのが、自社ではどの商品がどういったユーザー層に対してどれくらいの頻度で売れているか、ロイヤルカスタマー、リピーター、新規ユーザー、離反予備軍、離反顧客などがどれくらいいるのかなど、自社の状況を正確に把握することです。
データ取得の期間は、直近1年間の分析をするケースが多いですが、数年間のデータを使って、その推移を見ることもあります。
※具体的な分析の種類等に関しては別の記事で紹介します。
定性データ分析
いわゆる顧客アンケートによるデータ分析です。ただ、顧客の属性だけではなく、ユーザーの購入経路、購入に至った経緯、商品の満足度などの自社商品・サービスに関すること、SNSの利用状況、検索エンジンの利用状況などのインターネット活用に関すること、興味関心、困っていることなどのライフスタイルに関することまでを調査します。
これは、次に行うペルソナ設定などで非常に有効になりますので、できるだけ詳しく聞いていきましょう。
さらに余裕があれば、FGI(フォーカスグループインタビュー)を実施してみてもいいかもしれません。
FGIは、4~6人ぐらいのユーザーを集め、実際に商品やWebサイトに関することを直接ディスカッションするものです。コロナ前は、来社してもらい会議室や専用のレンタルルームなどで実施していましたが、コロナ発生以降は、オンラインでのFGIが主流になっています。FGIでは、司会進行を担当するファシリテーターのスキルが重要ですので、経験者に依頼することをおすすめします。
いずれの定性データを取得する場合でも、注意すべきことがあります。
顧客に聞きたいことをヒアリングする前に仮説を立てておくことが最も重要です。アンケートやFGIなどは、顧客から新しい発見を得ることも重要ですが、一番重要なのは仮説の検証です。顧客が、どういう経路で、どう感じて、何に魅力を感じて、商品・サービスを購入したかの仮説を立て、それが正しかったかどうかを検証するのです。実施することで、必ず新しい発見があるわけではありませんので、メインの目的は仮説の検証で実施してください。
■ペルソナ設定/戦略策定
ペルソナを設定して、そのペルソナに対してどういったコミュニケーションをとっていくかの戦略を策定するステップです。
ペルソナ設定
ペルソナは、最初の段階で調査・分析した内容をもとに作成します。
現在の顧客をペルソナにするケースもありますが、現在の顧客をベースに獲得したい顧客層を広げたりするケースもあります。いずれにせよ現状の顧客属性やアンケートによる顧客のインサイトを知ることで、より正確な顧客像を設定することが可能です。
商品ごとにユーザー層が異なる場合や、1つの商品でも幅広いユーザー層が存在する場合があるので、複数パターン作成することもあります。
あまりに細分化するとターゲットが絞り切れなくなるため、1パターンから3パターン前後までにするといいでしょう。
具体的なペルソナ設定方法については、別の記事で紹介していますので、参考にしてください。テンプレートもダウンロードできますので、時間がある時に作成してみてはいかがでしょうか。
CRM戦略策定
ペルソナ設定ができたら、そのペルソナに対してそういったコミュニケーション戦略を実施していくかの戦略策定を行います。
・ユーザーセグメントの設定
ユーザーセグメント分けは非常に重要です。ユーザーセグメントは、ペルソナと購買データを見比べてユーザーがどういった分類に分かれるかを考え、グループ化するものです。
オリジナルTシャルや制服を販売するECサイトの例
Tシャツ、ポロシャツ、制服など、商品ごとにユーザーをセグメントすることもできますが、顧客層を見ると、大きく、①会社の総務部署(企業の制服購入)、②個人事業主(飲食店等の店舗経営者のユニフォーム購入)、③社会人サークル幹部(社会人サークルで使うTシャツ)、④学生サークル幹部(サークル活動で使うTシャツ)の4タイプのユーザーに分かれることが判明。
それぞれの顧客層は、購買目的、興味関心、メリットに感じるポイントなどが違うため、仮にメルマガを送る場合は、情報提供内容を分けた方が読まれたり、次のアクションにつながったりする可能性が高くなります。
こうしたユーザーセグメント分けを行います。いくつかのセグメントが存在する場合は、仮説を立てて、どのユーザーセグメント分けを行うか決定していきます。
・情報配信手段と配信方法の決定
情報配信手段は、DM、メールマガジン、LINE、MAツール、アプリ(プッシュ通知)、SMSなどがありますが、どの配信手段が一番効果的かを考えて決めます。
最近は、LINEが一番読まれる率が高いといわれていますが、LINEの場合は配信数によって費用がかかるため、配信コストを考えて情報配信手段を決めるべきでしょう。
情報配信手段が決まったら、次は配信方法です。
配信方法には、ステップメール、キャンペーンメール、バースデーメールなどがあります。一般的には、まず、セグメントユーザーごとにステップメールを設定して、その後、他の配信方法を決めていくケースが多いです。
・KPI設定
KPI設定をせずに配信するケースをよく見かけますが、KPI設定なしでは数値の根拠をもとにした改善策が出せないため、効果的とは言えません。
基本的なKPIは、開封率、クリック率、コンバージョン率、F2転換率、RF分布などがあります。数値を見ていくことで、情報提供を実施した際、数値がどうなるのか、良くない数値の場合にはどの部分の改善が必要なのかをきちんと把握することができ、効果的なCRMを実現することができます。
■コンテンツ構成/制作
ユーザーセグメントごとに、そのセグメントのユーザーが興味があると考えられるコンテンツを構成して制作します。
HTMLメールであれば、すべて読まれる構成にしなければいけませんし、LINEであれば文字数などの制約があるため、制約の範囲内でユーザーにアクションを起こさせるものにしなければなりません。
配信方法に合わせた適切なコンテンツを制作しましょう。
■効果測定/改善→PDCA
配信後は、事前に設定したKPIを定期的に見て、仮説を立てて改善案を考えます。
例
メルマガの開封率が悪い
▼仮説:メルマガのタイトルがユーザーの興味を引いていないかも?
▼改善案:タイトルの変更
開封後のクリック率が悪い
▼仮説:HTMLメールのユーザビリティが悪い/メリットが伝わっていない
▼改善案:ボタンを目立たせる/クリック後のメリットを明確に
KPIごとに仮説を立てて改善案を実装して、それを繰り返していきます。
大切なのは、改善を繰り返すことです。
まとめ
今回は、CRMの効果的な進め方と実施方法を解説しました。CRMは重要な施策であるため、新規顧客開拓と同様にきちんとした対策が重要です。単なるメルマガ配信ではなく、セグメント分けした顧客の興味関心ごとを把握してコミュニケーションをとっていくことで、リピーターやロイヤルカスタマーへのナーチャリングが実現できます。
CRMをまだ実現できていない方は、ぜひ、チャレンジしてみてください。
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